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2012年6月10日日曜日

✰【INJ Essay】✰「What’s the craic? 天気は悪いが今日も元気!わかふぇよしみのゴールウェイ徒然草」Vol 15~労働に対する価値観の違い第2章~Chifumi Takahashi/アイルランド:ユーロカップまもなく出陣✰




「わかふぇよしみのゴールウェイ徒然草」のご愛読者の皆様、はじめまして。
ちふみと申します。以前ワーホリでアイルランドに滞在していた折、よしみさんと一緒にあれやこれやと、
人生もう二度とない体験を経たのち、今は台湾で日本語教師をやっています。
このたびは、アイルランドの恩人、よしみさんのご依頼に応えるべく、
過去の知識を掘り起こしてなんとかやっとこさ、原稿を書くことができました。





 学生時代に少々宗教学について勉強したことがあったとはいえ、あくまでも素人の書く内容ですので、間違いもたくさんあるかと思いますが、これも一つの見方として寛大に受け止めていただければありがたい限りです。
 






さて、よしみさんからのお題は「日本とヨーロッパの宗教観の違いを踏まえた労働に対する価値観の違い」
ということでした。


ですので、ここで挙げたい、日本人の根っこにある宗教観についてまずは述べておきましょう。
今の日本には様々な宗教があり、一体何が日本の宗教なの?とわからなくなってしまいます。
日本にある様々な宗教の大本は外国からやってきたものがほとんどなので、外国から宗教がやってくる前の時代から存在している宗教、
というよりは信仰を、大昔からある日本の宗教として取り上げることにします。






では、その宗教とは一体何か?というと、神道であるといえるのではないでしょうか。

 神道にはたくさんの神様がいます。「八百万の神」と言われるくらいですから、そりゃもうたくさん。
八百万の神様にはいろいろな種類の神様がいますが、多くは自然にまつわるものです。
自然にまつわる神様の筆頭としてあげられるのは、やはり天照大神でしょう。
天照大神は太陽の神様、また天皇家の祖先神として、日本の神話の中で読まれている超有名な神様です。
大変有名で尊い神様であるこの天照大神ですが、実は日本の神様の中で一番偉いというわけではないんです。


『古事記』という書物の中には、天照大神が他のもっと偉い神様のために働いているという記述があります。
一体どんな仕事をしているのかというと、自分より偉い神様のために、神様の着る衣を作っているんです。
この衣を神様に差し上げること、つまり神様を「お祭りする」というのが、天照大神の仕事の一つだと言えるでしょう。
















 さて、ここで疑問になるのが、なぜ天照大神がお祭りをする必要があるのか?ということですね。
お祭りのイメージというと、お神輿をかついだり、神社の前に出店が並んだり…といったイメージがあるのですが、
お祭りをするそもそもの理由とはこれいかに。


簡単に言うと、お祭りをして神様に喜んでもらうことで、神様から良いパワーをもらったり、
神様の怒りを買って悪いことが起きないようにしてもらう、言ってみれば神様のご機嫌を伺うというのが、
お祭りの目的でしょう。
天照大神は偉い神様ですが、事の真偽をはっきりさせるために、自分より偉い神様の力を借りたという話があります。
つまり、天照大神もいざという時、自分より偉い神様の力が必要なときがあるわけで、
その必要な時に神様が手を貸してくれるようにと、日々神様をお祭りするために働いているのではないかと私は考えます。

 ここまでは神様の世界の話を中心にしてきましたが、人間の世界の話に目を移してみても、
お祭りを行う神様の生活スタイルと人間の生活スタイル、特に科学が発展する前の大昔の生活スタイルとは
リンクする部分があります。
それもそのはず。神話や信仰と言うのは、人びとの生活の中から生まれ出てくるものですから、
人々の生活と神様の生活が似ていたとしても不思議ではありません。
では、大昔の日本の人びとは一体どういった生活をしていたのか?それを考えてみましょう。













 皆様も知ってのとおり、私達日本人の生活と、「お米」は切っても切れない間柄です。
それこそ気の遠くなるような大昔から、日本人はお米を育てて生活をしてきました。
その年のお米の出来、不出来によって、多くの人が生命を失うこともあった、言わば「お米」は日本人の
「命の源」のような大切なものであったと言うことができるでしょう。
お米を育てるには時間がかかりますし、何より人手がなければなりません。
今のような耕作機械のない大昔ならなおさらです。
そのため、昔から人びとはお互いに協力しあってお米を育てることに一生懸命だったというわけです。
協力しなければお米は育てられない。
お互いに協力し合わず、お米が育てられなければ、社会生活がだめになってしまう。
つまり、協力しない者=働かない者は社会生活や秩序を乱す「悪」として考えられてしまいます。
「働かざるもの食うべからず」という言葉は、おそらくこの考えからきているのでしょう。
このことからも、日本人の労働に対する考え方を知ることができます。


 また、お米を作る妨害をする者も「悪」とされる風潮がありました。
『古事記』の中に、天照大神の弟の須佐之男命が、田んぼのあぜを埋めたり、壊したりしてお米の栽培を妨害したという行為が、
須佐之男命が犯した「いたずら」として書かれています。
そのときの天照大神はというと、寛大な心で見逃したのですが、度重なる須佐之男命の度を越したいたずらによって、
最後は頭に来て引きこもってしまいます。
その結果、天照大神のもう一つの大事なお仕事、高天原(神様達がいるという世界)を統治するということが一時的にできなくなり、
その他の神様からの怒りを買って、須佐之男命は高天原から追放されるという罰をうけます。
このことから考えると、仕事を妨害すると言うこと自体が「悪」ということになるのかもしれません。




 話が脱線してしまいました。さて、日本人にとって大切な米栽培にとって大切なのは人びとの協力、そして何より天候です。
天候によってその年の収穫が左右されるのは今も昔も同じこと。
お百姓さんはじめ、皆がその年の天候を気にするというのは言うまでもありません。
今は科学の進歩によってある程度手立てを打つことが出来るようになりましたが、
科学の「か」の字もわからない昔の人にとって、その年の天候が良好になるということは、
全て自然界にいる神様に頼むしかなかったわけです。この神頼みこそが「お祭り」なわけです。

このお祭りに欠かせないお供え物の一つが、実は「お米」。
人びとの労働と、神様の加護を得て、無事に育ったお米を神様にお供えすることで、神様にその年の豊作の感謝をし、
来年も同じように豊かな実りをもたらしてもらえるようお願いをする、これがお祭りの一つです。
 
ここまでの話を総合すると、「労働」と「お祭り」と「神様」がそれぞれにリンクしあっている三つ巴関係にあることがわかります。
まず、人びとは生きていくためにお米を作りたい。
でも、神様の機嫌を損ねて日照りや旱魃、長雨によって米が作れないと自分達の生活が壊れてしまう。
だからこそ神様には豊かな実りを約束してもらうために「お祭り」をして神様のご機嫌を伺うことで、
神様の力を貸してもらわなければならない。
お祭りをするためには、みんなで協力して労働し、米を作らなければならない。
この過程で働かないものは社会秩序を乱す悪というレッテルを貼られてしまう。
前年の祈りが神様に聞き届けられていたら、今年も豊かな実りがもたらされ、来年の実りを再び神様にお願いすることができる…と、
それぞれが歯車となってうまく機能して、社会の秩序と安定は保たれると、大昔の日本人は考えていた…のではないでしょうか。
「労働」という歯車が機能しなければ、お祭りもできないし、神様のご加護も得られない、それどころか神様の怒りを買ってしまうかもしれない。
労働しないということは、社会の和を乱すことだという認識が、日本人の心の奥深くに根付いているのかもしれません。






 さて、先ほどから何度も出てくる「神様にお願い」の神様とは一体どんな神様なのでしょう?
私達人間にしてみれば、天候の順調を祈るときは天候の神様、学問の成功を祈るときは学問の神様…と、
それぞれのエキスパートの神様にお願いをしますが、そのお願いをされる神様、例えば天照大神もまた、
別の神様にお願いをすると冒頭に述べました。
では、天照大神がお願いする神様は一体誰なのか?それははっきりしません。
もしかしたら自分の産みの親の伊邪那岐命かもしれません。
かといって、伊邪那岐命が日本の神様のトップ?かというとそうではなく、伊邪那岐命よりも偉い神様が、実は存在しています。
その神様は、伊邪那岐命に国を作れと命じたり、伊邪那岐命夫婦の小作り相談にアドバイスしてみたり…。
その神様というのは、この世ができた時に誕生した神様と言われていますが、
その神様が神様のトップなの?と言われると、定かではないとしか言えません。
 
つまり、日本人の信仰の中に、この神様が最高に偉い絶対のパワーを持っている!という考えがないわけです。
ここが西洋のキリスト教と最も大きく異なる点ですね。絶対の神を信仰すれば間違いないというのではなく、
自分よりも遥かに強い力を持つ、畏れ多い存在というのが数限りなく存在している。
そのため、その強い力をもつ存在の下で暮らす私達人間は、その存在の不興を買わないよう、
むしろ守ってもらえるよう、慎み深く、和を乱さず、しっかりと労働して、その存在をお祭りすることで
社会生活の安定や、私達自身の心の安定が図られるという考え方が、日本人の「労働」に対する考えの根底にあるのではないでしょうか。
 
ここまでの話にご満足いただけないかもしれませんが、私に言えることはこのくらいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

Wrtten by 高橋千典 (Chifumi Takahashi)







ちふみさんは神様について大学で勉強し、神主の資格も持っている人です。

わかふぇで働いてくれた時はいろいろ教わって面白かったです。そのころの雑談から思い出した今回の

原稿依頼。大作に仕上がりましたね~。ちふみさんありがとう!

仕事後に2人で話している時にちふみさんがわかふぇの為に英語で祈祷をしてくれたのがいい思い出です。

また合気道、アニメ、宗教と多趣味なちふみさんとはいろいろなイベントも開催しました。

ダブリンのFarmleigh Houseで行われた震災イベントには白装束でアイルランドの神様と日本の神様を

お呼びして日本の復興を祈祷したり。



さて、本文に戻りますが・・。ちふみさんも言っているように、太古からの人間関係は変わらない。

それにしても日本の神様は怒ったりすねたり機嫌を取ったりなんとも庶民的ですね。(笑)



前回vol.14でも怒りにまかせて書いてしまったように、こちらの人が「労働は悪」と思っていることは、

神道の教えが残っている日本人の私には絶対に相容れない、まさに最近の私を苦しめているギャップだったのですが、

ちふみさんの考察から「もうこれはしょうがないことなのね。」と

いう諦め感というか、理由がわかりなんとなく筋が通って、ほっとしたような気がしました。

絶対的な価値観の違いが日本とアイルランドを含むヨーロッパ(一部とても働き者の国もありますが)、

には横たわっていて、働き方について分かりあうということは限りなく難しい。

これを「分かれ」というのは私のエゴになってしまうでしょうね。



これまた独断と偏見で言わせてもらうと(限られた知識を以ての感覚的な判断ですので、間違っていたり、どなたかの気分を害してしまったらごめんなさい)



「働かざるもの食うべからず」- 神道

「労働は悪」- キリスト教




ひとつ言えるのはこういった宗教観の違いは働き方にとても大きな相違をもたらしている。

もうひとつ突き詰めてみると、宗教は風土が生んだもの。

天災に見舞われることが多く、みんなで田植えをして半年かけて稲を育て1年分の食料を確保する農耕文化

の日本。

みんなで力を合わせなければ、家を守ることができず、食料にもありつけない。天候も神様ひとりではマネージできない。

ので神様も働く。

















一方、ヨーロッパでは基本、比較的風土に恵まれています。基本外に出て森に行けば食料となる獣や果物がありその収穫は天候と運次第。

食料は自分の努力とは関係ない所に左右される。すべては神様のお恵みに拠る。神様は絶対。行いを良くして祈ること。そしたら与えられる。



風土の違いはいろいろな文化の違いをもたらしていておもしろいな、と思います。



余談ですが、日本の小学校では給食後みんなで揃って掃除をしますが、こちらの学校は生徒が掃除をすることはなく

掃除は掃除のおばさんがすることになっています。



さて、私的には(違うところもたくさんあるかも知れませんが)とにかく長時間働いていることが評価される

とか、会議がやたら長い日本の仕事のあり方はどうかとは思いますが

日本的な働き方は一番公平で効率がいいと思います。

日本人的な働き方-例えば、時間は守るとか、みんなが協力してひとつの仕事がうまくいくよう動くとか、

仕事内容の詳細に厳しいこと、仕事に携わっている以上プロである姿勢を求められること-は、

クオリティの高い仕事をすることにも繋がって、だからこそ「Made in Japan」が世界に認められることになったのでしょう。



こちらでは、私を含めた日本人の働きぶりを「ワークホリック」と、冗談混じりに言われることもありますが、

今の私にはわかふぇを日本的なやり方でオペレートさせることで、いつか私の小さな主張がみんなに伝わると

良いな、と思っています。

そしてそれを認めてもらうためには、真面目に精進して行くしかないですね。







ゴールウェイは今、夏真っ盛り。

朝は4時ごろから明るくなり始め、夜は11時過ぎまで明るいです。

短い夏を少しでも楽しもうという気分いっぱいのゴールウェイの人たちは、最近ウキウキです♪







街は後3週間と迫ったVolvo Ocean Raceの準備に大わらわです。











1年間かけてセイリングしてくる国際的ヨットレースのゴール地点となり、六十万人の見物客が訪れるとの予測です。

わかふぇも24時間オープン体制で(笑)Getting Ready~~!!









さあ、今日も元気にまいりましょう~





















よしみ@わかふぇ 


Photo Courtesy:YOSHIMI HAYAKAWA

(アイルランド共和国現地 6/9ゴールウェイ電)











Ireland goes GREEN for the Euros



Its show time

















6/10(日)日本時間深夜3:45 試合開始     

アイルランド vs クロアチア









   6/14(木)日本時間深夜3:45   試合開始  

アイルランド vs スペイン







6/18(月)日本時間深夜3:45試合開始

アイルランド vs イタリア