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2014年11月6日木曜日

「What’s the craic? 天気は悪いが今日も元気!わかふぇよしみのゴールウェイ徒然草」Vol 38~「短歌歌人,香川ヒサさん」








皆さま、ご無沙汰しております!夏の繁忙期が終わり、また出てきましたよ。(笑)わかふぇのよしみです

この夏のゴールウェイは来愛13年になる私にとっても初めての経験と言えるくらいの良い天気の夏となりました。
6月中旬から8月いっぱいまでほぼ毎日晴天、Tシャツ一枚で歩ける日が続き、非常に快適でした。
すっかりこの天気にも慣れ、雨のゴールウェイがどんなだったか忘れてしまった頃、秋風が吹き始めました。
それとともに雨が戻って来ました。
今年は夏らしい夏を過ごさせてもらった分、風雨が戻った初日はみんな揃って「Shocking!」と言っていましたが
1週間もするともう慣れてきた感じです。
ゴールウェイはすでに秋を通り越して冬モードです。

夏が過ぎ観光シーズンが終わると、わたしにとっては楽しい文化活動シーズンの到来となります。
そんな文化シーズンを前にして短歌歌人の香川ヒサさんから寄稿原稿が届きました。
毎年ご夫婦でゴールウェイを訪れてくれるので、その度にお会いしていろいろなお話しをさせてもらうのが楽しく、もう10年以上も親しくさせていただいています。
初めてお会いしたのは2003年でしたが、香川さんが「角川短歌賞」を受賞した現代短歌界を代表する歌人だという事がわかったのはだいぶ後だった気がします。
ヒサさんが作る短歌はその関連のウェブサイトでは以下のような評価を得ています。

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(以下ウェブサイトより抜粋)

  香川が角川短歌賞を受賞した回は、前年に俵万智「サラダ記念日」の大ブームが起こっていたこともあり、史上最高の応募数が集まった回でもある。その厳しい争いの頂点を勝ち取った香川の歌が、サラダブームで短歌をはじめた人が目を丸くするような作風であることはなんとも示唆的である。相聞歌もほとんどなく、短歌からイメージされがちなウェットな叙情性がまるでない作風なのだ。」

「自分という存在の不条理さとちっぽけさを自覚しつつも、決してセンチメンタリズムに陥らない。」

「世界の歪みを捉えて脱臼させてしまう香川の方法論からは、こういった思わず笑ってしまいたくなるような歌も生まれてくる。ナンセンスといえばナンセンスなのだが、なぜか不思議な魅力を放っている。こういったたくまざるユーモアが、世界に対峙する〈私〉たちの張りつめた気持ちをほぐしてくれるのである。」

「理知的な言葉への好奇心によって私達の常識の死角に宿る思いがけない詩を発見してきた歌人」


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短歌を通じて知り合ったわけではないですが、わたしが香川ヒサさんを思い浮かべるとこんなイメージや言葉が出てきます。男性的でもあり、女性的でもあり、フェアネス、ユーモア、Cool、無邪気、肯定。。。
ヒサさんの作品に通ずるものがありますよね。






ヒサさんの旦那さま、久生さんは若い頃は趣味でヨットを駆っていたというヨットマン、電力会社のトップを退職後の今は料理やワインに凝り、玄人はだしの料理をふるまったり、テニスや趣味のサークルの幹事を務めたり、とこれまた多趣味でダンディなかたです。

ご夫婦揃って気品あるたたずまいでいろいろなことに興味をもたれ仲睦まじく旅行されている姿はほほえましくもあります。

何をお話ししても喜んで聞いていただけるので、ついついお会いする度に一年のいろいろをお話しさせてもらっているので(毎年お会いする度に驚かせているようですが(笑))
もしかしたらゴールウェイでのわたしの歩みを一番よく知っている人たちになるかもしれません。

香川ヒサさんは2007年には「若山牧水賞」を受賞され、2009年からはゴールウェイで地元詩人とのコラボで短歌の会を開くのが恒例となりました。
ゴーウェイ在住でアイルランドを代表する詩人Moya Cannon(彼女の詩がゴールウェイの橋のたもとに掲げられています)をはじめ毎年個性的なアイルランドの詩人たちを招いて朗読会をしています。
回を重ねるにつれ、ゴールウェイでの短歌の会も認知が高まり、ワインと共に楽しむ短歌の会、朗読会の後には詩人や地元人達との交流も楽しく、
  チャーリーバーンズブックショップIrish Times2013年度Best Bookshopに選ばれました!)のスタッフに加え、毎年の香川さんご夫婦の来愛を楽しみに待ってくれている常連のオーディエンスも増えてきました。
来年2015年は第7回目となります。第5回目からはダブリンの日本大使館でも短歌の会を催しています。
ゴールウェイ、ダブリン、機会がありましたら是非ご参加ください!!

さあ、香川ヒサさんの寄稿エッセイは以下に続きます。ヒサさんの短歌やイベントでコラボしたアイルランドの詩人たちの作品、ヒサさん自らの英訳もたくさん出てきます。
是非お楽しみください!!


ゴールウェイ香川ヒサ短歌の会
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さぁ、今日も元気にまいりましょう♪


Photo Courtesy:YOSHIMI HAYAKAWA

(アイルランド共和国現地 11/2ゴールウェイ電)
















 アイルランドは、イギリスの西、大西洋に浮かぶ北海道ほどの大きさの島国である。東海岸にある首都ダブリンから、ほぼ真西に島を突っ切った西海岸に、ゴールウェイという町がある。アイルランド第四の都市というが、そもそも総人口が五〇〇万に満たない国のこと、人口約七万人の小さな町だ。ジェイムス・ジョイスの小説の中に出てくる二〇世紀の初め頃のゴールウェイは、とても侘びしげだったが、近年の経済成長の成果もあって、いま町は活気に溢れている。
 鉄道駅とバス・ステーションの前にあるエヤ・スクエアから買い物客で賑わう通りを十五分くらい歩くと、ゴールウェイ市内を流れるコリブ川の河口に出る。そこは昔、スペインを始めとする大陸との貿易に栄えた波止場で、波止場を守った門の一つ、スペイン門が現在も残っている。潮の匂いに機械油の臭いの混じった港の風を後に、通りを一つ入ったところに、ブレナンズ・ヤード・ホテルがあった。現在のハウス・ホテルだ。ブレナンズ・ヤードは、石壁のなかなか重厚な、けれど全室四五という小さなホテルだった。そこに、週三日、日月火曜日に、「河童屋」という名で日本料理をレストランに出していた早川芳美さんと出会った。芳美さんが、なぜゴールウェイにやって来たかはわからない。が、彼女が、料理は一瞬の芸術だと言い、ゴールウェイの食材の良さを言い、ゴールウェイの人に日本料理を知って欲しいと言い、アイルランドのバブル経済に賭けていると言い、シェフであるパートナーの料理への絶対の信頼を言う時、とても輝いていて、彼女たちがゴールウェイに日本料理店を開く日も近いだろうことを思った。二〇〇三年のことである。
 芳美さんの夢がどのように実現されて行くか見たくて、それから毎年ゴールウェイにやって来ることになった。実は、芳美さんは、ゴールウェイの人に美味しい日本料理を提供するのと同時に、日本とアイルランドとの異文化交流の場を作りたいというもう一つの夢を大事に育てていたようだ。そして、WA CAFÉが立ち上げられた。WA CAFÉは、今日本とアイルランドをつなぐ文化の発信基地となっている。アニメ祭、映画祭、アニメ・イヴェント・Akumakon、ゴールウェイでのフードフェスティバルや石巻市でのオイスター祭りなどなど、みな芳美さんが進取の気性で企画し実行に漕ぎ付けた事業や、地元の企画に積極的に参加、協力して新しい風を吹き込んだ事業である。私の参加している短歌と詩の朗読会も芳美さんの肝煎りで始まったのだ。ここまでになったのは、芳美さんの並外れた努力と行動力の賜物だが、なによりもゴールウェイの人々の厚い信頼を獲得していることが大きいと思う。それを語る例を挙げると、芳美さんはReg Gordonの写真集「TRIBE A portrait of Galway」にゴールウェイの「一族」として載せられているのである。また、芳美さんが二〇一一年五月二六日、開催した東日本大震災からの復興のための応援イヴェント「Galway For Japan Day」も忘れてはならないだろう。ゴールウェイ日本人会代表の早川芳美さんの呼びかけにゴールウェイ市が応じ、その日はゴールウェイのハイストリートに日の丸が掲げられ街中のパブやレストランには募金箱が置かれた。アイルランド国営放送RTEの人気ラジオ番組「Breakfast With Hector」の「Breakfast With Japan」に始まり、聖ニコラス教会での日本復興のためのミサ、茶道・書道や武道からアニメまで様々な日本文化紹介のイヴェント、詩の会Over The Edgeによる東北追悼のための朗読会、またパブThe Kings Headでの伝説のバンドLove Biscuitsによるチャリティライヴと、熱い日本支援の一日になった。そして、ゴールウェイ市長から在アイルランド日本大使代理に、地元の市民や小学生がメッセージを書いて折った緑の千羽鶴と共に贈られた義援金は四〇〇〇ユーロに及んだ。アイルランドがリーマンショック以来の経済危機にあり、失業者も増えていて他国の援助どころではない時のことであり、芳美さんとゴールウェイの人々と強い絆を思うのである。
 短歌と詩の朗読会は、二〇〇九年に始まった。芳美さんの親友Moya Cannonがアイルランドを代表する詩人であり、しかも日本の俳句にも造詣が深いこと、短歌を作っている私が前年に若山牧水賞を受賞していたことなどがきっかけとなり、芳美さんの「やりましょう。」の一言で動き出した。場所は、Galyway City Museum、広い場所なのでどのくらいの人が集まるか心配したが、芳美さんとMoyaさんの人間関係の豊かさだろう、多くの来場者があった。WA CAFÉ提供のワインと寿司や枝豆などのおつまみで歓談した後、Rev. Patrick Towersの司会でまずMoyaさんが自作を朗読。背後にケルト文化から受け継がれているものを感じさせる詩がMoyaさんの深い声で読まれると、心が遥か遠い時代へ運ばれてゆくのを感じた。Moyaさんの詩を一つ、紹介しよう。著作権に触れる心配があるので、拙訳でお許し願いたい。


   音色                    Moya Cannon

言葉はただ発ってゆくのではない。
どうしても必要な道程を運んでゆくのだ、
ほら、ナイフは、あるいは茶碗は、
しなくてはならない仕事がある時ここからあそこへ持って行かれる。
時には、長い旅の後で、
違った勤めを強いられることもあるけれど。

巧みに隠された
年年の状態を
樹は記録している。

樹木が伐られた後
でこぼこの年輪はその場所の歌を歌い出す―
日照りや心地よい夏や霜の降る寒さを―
痛みや喜びの道程が声となってほとばしる。


  晴れやかな街  
     
朝の光をたどって運河沿いの小道をゆく、
車道を横切りクラダ地区まで。
運河や川や河口を水銀に変えた光の中では、
遊歩道(ロングウォーク)に止まる車さえも神々しい姿になるのだ。

五羽の白鳥が羽ばたきつつぬかるんだ船溜りを過ぎる、
太々とクラリオンの音を響かせながら、
土曜の朝、たくましい雪白の背にのせて
この世の美しさを運んでいる。

 その時の私の作品。

朝光の差し入る部屋にあらはるるみな光より遅れて在るもの
中庭に薔薇を育てて来し光ゆるやかに薔薇の枝を曲げたり
空をゆく雲見てをれば過ぎ去りし雲の痕跡としてわれ在り
門の扉は閉ざされてをり這入らむとするものにのみ閉ざされてをり
堤防の海に突き出た先端に灯台が在りただそれとして   
草はただ揺れてゐたるも老人が気付きもせずに通り過ぎれば
聖堂の上に大空広がりてできれば神と言つてすませたい
入り口に警官がゐて出口にも警官がゐて途中にもゐた
世界言語交換し合ふ人類の白き歯見ゆるエアターミナル
刺すやうな光いきなり射るやうな光となりて河口に出でつ
これはそれそれはあれなりいつさいは問はれなければわかつてゐるが
三億年前よりあつた岩山も尾根行く人も風景である
この街の今日のできごといくつもの水溜まりとなり空を映すも
この星に過ぎる時間の先端の一分間を黙禱してゐる
西空の雲間ゆ差せる入りつ日に照らしだされるものの西側
カラー写真だつたとしても黒だらうカーライルの母の着てゐた服は
カーテンを開ければ朝の空が見え私はここに今来たばかり
始まりのあれば終はりのある旅の途上で一つ石を拾へり



 次の二〇一〇年は、Kevin HigginsSusan Millar DuMarsの主宰するOver The Edgeという文学者の会のPoetry Book Showcaseにスペシャル・ゲストとして参加した。Over The Edgeは、アイルランド詩の新しい世代として注目を集める詩人集団だ。場所は、Sheridan’s Wine Bar、ワイン片手の会であった。



  生活の質                   Kevin Higgins
     チャールズ・シミックに因んで

今ではポーランド人のウェイターが運んでくる
飲み切れないほどのスープをね。

けれどもあの頃、私はもっと幸せだった。

スープを頼めば
きまって来たものだ
空っぽの鉢が。

私たちはそこに何年も坐っていた、
にこにこと、アイルランド人的な考えで頭をいっぱいにして、
空っぽの鉢を
覗き込みながら。

毎晩私たちは頌歌を歌ったものさ。
「空っぽの鉢に
心から感謝せんことを。」
そして言葉がすべてだった。

感謝の言葉を言うのは素敵だよ。
私たちは全生活をかけてそうしていたんだ。

今みたいではなくね。



   朝ご飯にうってつけの夢       Susan Millar DuMars
                              

時々何もかもブルーになるの、
丘や手や家の鍵や煙突の煙。
もしも空気を齧ったなら
口はブルーのジュースでいっぱいになりそう。
不思議なのだけれど、安らかなのよ、
こんなに大きな影を投げかけているのは何なのかしら。

でなければ、私は格子縞のシートカバーの
バスに乗っている。
他の乗客たちはぐったりしていて
息が細い。思ったわ、
降りそこなったって。

別の時には、歩いているの、
静まり返った石の街を。
思い出せるのは、
白鳥と丘の上の教会だけ。

朝ご飯の間ずっとあなたに
こんな夢をご披露したわ。
そいつは相当な予算がかかるね、
天然色だ、
僕のはポケットサイズで
縮小版さ、小さな世界の小さな人間たちだ
とあなたは言って
トーストにバターを塗り、笑った。

私も笑ったわ、ブルーの遠景の中に
置き去りにされて。  



 二〇一一年からは、Charlie Byrne’s Book Shopでの会となった。Rita Ann Higgins,Mary O’Donoghue, Louis de Paor Nicki Griffin,みな個性的で素敵な詩人たちだった。朗読会があったればこそ、出会えたアイルランドの人々である。皆の詩を紹介したいが、涙を飲んで一人だけ挙げよう。



  いいスピーチ            Mary O’Donoghue

いいスピーチって何? いいスピーチは しゃべることよ わかりやすくはっきりと 適当な強調 そして言い回しでね

アイ!イー!アイ!オー!ユー! 『動物園の 縞馬ノーマン』の最初の詩の一行。 私たちは十四で 水曜日が嫌いだった、

大きな声を 出してはいけないし ヴァイオレット・エリザベス・ボッツにならなくてはならなかった、 お砂糖やプラムのように喉を甘たるくさせて。

ズィス!ザット!ズィーズ!ゾウズ スィスルズ! 舌をもつれさせないで、舌笛を吹いて。口蓋ってやわらくて硬いでしょう?男の子の口のなかを探して舌笛を見付けて。

『火星から来たマロッグ』は 吃音だから クラスの女の子のことで悪夢を見て ふらふらになっていたわ。

私たち、気持ちがいい。 小休止を味わっているのよ、デモステネスかオードリー・ヘップバーンみたいに雄弁だから。

私たち、すてきなものを隠している。 身振りをしている。 アイコンタクトをしている。 自分を病気にしているんだわ。




 二〇一三年からは、ダブリンの大使館での短歌と俳句の朗読会も始まった。芳美さんと在アイルランド日本国大使館の二等書記官山田有一さんの尽力のお蔭である。特に、二〇一四年からは大使館主催のExperience Japanpre eventとなった。また、Experience Japanの一環となったことで、ダブリン・シティ大学の学生の参加も始まった。Anatoly KudryavitskyというIrish Haiku Societyの主宰が、英語の俳句を読み、私が短歌を読む。大使館主催というだけあって、日本文化に関心を持さまざまな分野の人集まってくれた。朗読会は、これからも大きく成長しそうである。
 二〇一四年の私の作品。




  火                 香川ヒサ 

明日へと急ぐならねど夜の闇を貫き走る高速道路
夜の霧を分けながら行く現在を超え新しき朝はあるべし
一日の光の中を抜けて来つ 善ならざるは悪なり全て
あれこれと入れてすつかり膨らんだ私をドアに挟んでしまふ
メール開けメール受信しメール書く私の身体置き去りにして
肘掛椅子に旨寝したれば傾きてぽろぽろ今日の光がこぼる
ストーヴの中に炎を上げてゐる燃え盛る火と燃え尽きる火が
燃え上がり燃え盛り燃え退る火を見てをり水の流れ見るごと
火を見つつ思ふ思想は感覚の影なれば常に暗く虚しも
ストーヴを掻きてひつくり返す薪 一度燃ゆれば再び燃えず
生くるため不可欠なものにありし頃一丁の斧美しかりけむ
何十年使ひ込みたる斧持たず斧のやうなる言葉を持たず
夜の空にオリオン輝く星と星結び直線引きし人ありて
巨き星見し夜の夢に一匹の羊が柵を跳びたり白く
私はここを動いてゐないのに春の雲置き今朝の空あり
ほのぼのと春こそ空に 春の鳥飛ぶには春の空間が要る
人類の歩き続けし先端を人ら歩めりどこかに目覚めて
木々の間に人を歩かせ歩かない木々は木の葉を降らしたりする
木々の間に注ぐ日光に明るみて林は冬の時間を在りき
ひと冬を越えて立つ木々 橅の木の裸木は橅の木の形して
浅みどり裸木の幹にけぶる見ゆ 最も遅れて季を知る人
冬蔦が裸木に絡みざわざわと地球に蔓延る緑濃ゆしも
遠山に発電用風車まはりをり風車は遠くにまはるがよろし
発電用風車まはればまはりつつ光と影を散らしてをりぬ
音もなく降り出した雨すぐ止めど雨に濡れたり夢にあらねば
道路沿いに廃線の線路走るなり鉄道沿いに道路造られ
鉄道に運ばれて来た鉄道草茂る廃線の線路に沿ひて
もう汽車の通ることなき廃線の線路を通る虫、獣、人
行き止まりの石置かれたる廃線の線路の先に獣道続く
行き着けぬものとしなりぬ雲居立つ岩山カメラに収めてしまへば
この冬のどこかに落としし手袋を思へり指を火にかざす度



   Fire                                           Hisa Kagawa

Across the darkness of the night, 
I drive through the motorway,
as if I hurry to tomorrow.

New morning should come,
so long as I get over the present time
through the night fog.

I have passed through
the brightness of daytime.
After all, everything is bad,
when it is not good.

I got caught my swollen body in the door,
because I stuffed myself with everything.

I open the mailbox, receive some Email,
and send them back.
feeling my body left behind.

When I doze and nod
on the armchair,
I feel the sunlight streaming down
drop by drop.

In the stove,
I found the battle of the flame
between the blaze and the extinction.

The flame first flares up,
blazes up,and then extinguishes.
I watch it like the flow of water.                                          

When I stared the blaze, I found out.
that the thought is shadow of the sense,
gloomy and vacant.

Firewood’s been overturned in the stove.
Once it burnt itself out,
it never bursts into flame again.

The old days when, an axe was
absolutely necessary for life,
how brilliant it might be.

I don’t have words like a sharp axe,
as I don’t have a well-used axe.

Why does the Hunter shine in the night sky?
Because someone drew lines between the stars
and linked them.

After I watched the big star,
I had a dream.
Whitely,one sheep jumped
over the hedge.

Spring cloud has been brought
in the morning sky,
though I stayed here just as I was.

Spring has come dimly in the sky.
Spring birds require spring space
to fly about.

Every morning I wake up somewhere
and walk at the head of
humankind history.

Trees make me walk among them.
Without walking by themselves,
trees send the leaves down to me.

The forest is lighted by the sunshine
falling down among the trees.
The forest tells me winter is here.

The tree has survived the winter.
In the shape of beech trees,
 the naked beech trees stand.

Misty greens sprout among
the trunks of a naked beech.
I am the last that find out
spring is here.

Winter ivies rustle
over the trunk of a beech tree.
Rustling of greens runs rampant
all over the earth.

The blades of wind-power
are rotating upon the faraway hill.
It is fantastic when I see the view
from a distance.
.
The blades of wind-power are
scattering a light and a shadow
alternately,rotating and generating.

It started raining without a sound
and stopped soon.
I’ve got wet and know that was
not a dream.

I drive on the road along with
the devastated railway track.
That’s because the new road had
been developed along with the track.

Rail trains brought grasses
along with the track.
Now the grasses grow thick
along with the deserted track.

On the deserted track, pass only insects,
animals and humankinds,
instead of trains.

Beyond the train-stop stone
of the abandoned track,
an animal trail continues far away.

Since the moment I took
a picture of a rocky mountain,
it turned to be something
beyond my reach.

It reminds me of my gloves
 I have lost on a winter day,
whenever I warm my fingers
over the fire.